第8章 お正月 <双子6歳>
「さと、まだおねむなの?」
潤から智を受け取った雅紀が眠そうな腕のなかの幼子に優しく聞く。
「まぁくん…だいじょうぶぅ…さと…おっきする
…はなび…するぅ…」
醒めきってぼーっとした声で智が言う。
「眠そうだな、智くん。
花火、あと少しで花火始まるよ?」
斗真が優しく髪を撫でながら言う。
「ほら、和も智もジュースいれたから飲みな?」
潤がコップを差し出す。
翔の膝の上に乗る和也が手を伸ばすのをサポートしながら翔が智に声をかける。
「智?オレンジジュースあるよ?
そろそろほんとに起きにないと花火、見れないよ?」
雅紀にサポートしてもらいながらオレンジジュースを飲んでようやく覚醒した智が驚いた顔をする。
「え?見るの?やらないの?」
「うん、みるの。大きな花火がねあがってきれいだって。
手持ちの花火は夏に出来るといいね?」
雅紀が優しく後ろから話す。
「二人とも、暖かい格好してね?」
真冬の真夜中のロンドンは寒い。
ここで風邪をひいてはまずいのでコートにマフラー、手袋をつけさせ、大人たちも準備を整えてベランダに出る。
近隣のホテルのベランダはもとよりテムズ川に架かる橋にもたくさんの人がいるのが見える。
「うわーいっぱいいる!!」
その光景に双子は感嘆の声をあげた。