第8章 お正月 <双子6歳>
「翔兄?そんな顔しないでよ?
いいじゃん、一つの可能性を知ったってことでさ。
対処法も見えた訳だし…良かったね?」
「そうそう、そんなに暗い顔しないでよ。
智たちが心配するじゃん。
もうすぐ新しい一年が始まるんだよ?
雅紀が言ったみたいにさ、これで慌てなくて済むじゃん?
もちろん話が来ないことの方が可能性は高いんでしょ?」
「うん…まぁ…まだ先輩たちもたくさんいるし…」
「じゃ、いいじゃん。
ほら、飲もう?醒めちゃったでしょ?」
潤が翔のグラスにワインを注ぐ。
「だね?さ、飲み直そう!」
雅紀が明るく言う。
「サクショーごめんね?」
斗真が申し訳なさそうな顔で言う。
翔はなにも言わずに斗真のグラスにワインを注ぎ、グラスを合わせる。
「ほら、飲むぞ?」
「お…おう」
一瞬戸惑った顔の斗真が、相好を崩す。
それまでの空気が嘘のようにまた4人、楽しそうに飲みはじめた。
「翔ちゃん…そろそろ起こす?」
時計を見た雅紀が言う。
「ん?…あ、ホントだ。
そろそろ起こさないとカウントダウン、間に合わないな」
「あ、俺行ってくるよ?」
潤が二人の寝ている部屋に入っていく。
しばらくしてパタパタと足音が聞こえてきた。
目を拳で擦りながら和也が翔たちのもとにやってくる。
「あれ?さとは?」
雅紀の問いに潤が腕のなかの智をさしながらここと答えた。