第8章 お正月 <双子6歳>
「潤まで?なに?どうなってんの?」
翔が珍しく、混乱しきった顔で聞いてくる。
「いや、だって俺だけ日本に残るのなんて寂しすぎるじゃん?
ならさ、こっちに来てどっかの弁護士事務所入ってもいいし、日系企業の企業弁護士するのもありだしさ?
だから、翔さんがこっちに赴任になったら俺も付いていくから!
まぁ単身赴任するなら別だけど?
日本で智と和也のこと、ちゃんと見るから安心していいよ?」
「え?もうなんなんの?まだ何も決まってないどころか話さえ出てないのに…」
頭を抱える翔に雅紀がのんびりした口調で言う。
「まぁそれぐらいの準備は出来てるから、翔兄は思いっきり仕事してよ?ってこと」
「そうそう、どう転んでもちゃんとみんなで幸せになろうね?って話よ」
潤も鷹揚とした口調で言う。
それをみた斗真がにっこりと笑って言う。
「サクショー、マジでいい家族だな?
これなら本当に話が出ても問題ないじゃん。
正直、坂本さん、欲しがってるよ、お前のこと。
あとは東山さん次第じゃない?」
「そんな簡単に言ってくれるなよ…」
翔が情けない声で言う。
突如、出てきた話に翔はまったく付いていけない。
もともと突発的な事態には弱い方な翔。
それでもこれまでのアナウンサーとしてのキャリアでだいぶ慣れたとはいえ人生を左右しかねない問題に完全に思考が止まってしまう。