第8章 お正月 <双子6歳>
「ふーん、じゃ、もしそうなったら、サクショー単身赴任?」
「お前なんなんだよ、さっきから」
「いやさ、そろそろこっちでは次の特派員の話が出る時期なの。
おれはまだ任期残ってるからこのままだけどね?
ほら、そろそろ堂本さん、任期終了だからさ、次はだれがくるんだろって話で…。
正直、お前の名前も出てるんだよ。
だからね、聞いてみたかったの。
もし、お前に白羽の矢が立ったらどうするのかを。
俺は勿論大歓迎だよ?
サクショーと仕事できるの。
でもお前、家族いるしね?」
「へー、なんかすごいね、翔兄」
雅紀が明るい声でそう言って話に入ってきた。
「翔兄がこっちに赴任になるなら…おれ、こっちに留学しようかな?」
突然、爆弾を落とすようなことを言ってきた雅紀に翔がびっくりした顔で動きを止めた。
「え?そんな話があるの?」
「別に具体的にはなってないよ、なにもね?
でもこっちの小児医療って興味あるからさ。
前の学会の後にちょっとそんな話を貰ったけどあの時はまだ考えてなかったし。
今もこっちに一人で来る気はないけどさ、翔兄がくるならその間、こっちで勉強してもいいかなぁって」
にっこりと笑いながらとんでもないことを言ってる雅紀に翔が頭を抱える。
「そのときは俺も一緒にこっちに移ってもいい?」
潤まで明るい声で言い出した。
翔は驚きすぎてフリーズしてしまった。