第8章 お正月 <双子6歳>
「そっかぁ…智くんたち、4月から小学生なんだぁ」
潤の一言に斗真が反応した。
「そうなんだよね。
小学生になったらほんと、大きな休みじゃないと気軽に旅行になんて行けなくなるよなぁ」
翔が改めて言う。
子どもたちが保育園の頃はそれでも、多少人とずれた時期に夏休みを取っても問題なかった。
雅紀はお盆に休まず、翔の休みに合わせることでお盆を休みたい病院スタッフに大いに感謝されていたし、潤は自営故に、その辺は上手く調整が利いた。
でもこれからは双子の学校があるから今までみたいには行かないかもしれない。
そんなことをこの旅行を通して考えていた。
「サクショー、あのさ、もしもの話だけどさ、海外特派員の話が来たらどうする?」
斗真が軽い口調で聞いてくる。
アナウンサーになって次の4月で13年目になる。
キャリアを考えるとそんな話が出てもおかしくない時期にさしかかっている翔。
むしろいままでそんな話が出て来なかった方がおかしかったのかもしれない。
テレビ局の中でも特殊な部署の一つであるアナウンス局。
人事異動とあまり縁のない部署だがそれでも全くない訳ではない。
数少ない異動の中でもっとも可能性があるのが海外特派員だと言うことは翔もわかっていた。
「どうするって…別にそんな話出てないし…。
でもまぁ、話が来たら断れないだろうな。
なんだかんだ言っても俺、サラリーマンだから」
それが翔の本音だった。