第8章 お正月 <双子6歳>
通された部屋はツーベッドルームの広めの部屋だった。
「斗真?お前こんな広い部屋…」
年末でこのロケーション。
普通だったら到底予約なんて出来ないような豪華な部屋に翔は絶句した。
「ここね、もともと会社で抑えてる部屋だから問題ないよ?」
「うちの会社ってこんないいところを抑えてるの?」
「まぁさ、接待とか、あと事件とかが起こった時に必要になるからね?
海外特派員を出してる地域は大体こういう部屋を押えてるんだよ」
斗真が当たり前だというような顔で言う。
「まだまだ知らないことってあるんだなぁ…」
翔がぽつりとつぶやいた。
夕食を終えて、潤が智と和也を寝かしつける。
口では強がっていたが連日の観光や慣れない環境に疲れていただろう。
潤がしばらくポンポンと胸元を叩いているとあっさりと寝てしまった。
電気を最低限つけて二人が寝ている部屋をでた潤。
「え?もう寝たの?」
雅紀が心底驚いた顔で潤に聞く。
「うん、びっくりする位早かったよ?」
「あ、潤お疲れ」
翔が潤に声を掛ける。
「こっちで飲もう?」
グラスを掲げる翔のもとに歩み寄るとグラスを受け取り、男4人、乾杯をした。
「あっという間に終わっちゃうね、今年も」
普段のテンションとは打って変わってしみじみと雅紀が言う。
「ほんと…あっという間だよなぁ。
年が明けたら智たちの卒園と入学の準備もあるし、忙しいね」
潤が少し先を見るように言った。