第8章 お正月 <双子6歳>
「サクショーこっち!」
聞こえてきた日本語に振り返ると斗真がいた。
とっくに日の暮れたオックスフォードサーカス。
そこで合流した6人は斗真の先導で地下鉄に乗り、目的の会場に向かう。
「ねー斗真?どこにいくの?」
和也が隣にいる斗真を見上げながら聞く。
「え?サクショーから聞いてない?
今日は大晦日でカウントダウンの花火があがるんだ。
だからそれをみんなで見れる場所に行くんだよ?」
「花火?」
智が嬉しそうに聞いてくる。
「そう、花火。
でも上がる時間が遅いからちょっとこのあとご飯を食べてから少しお昼寝ね?」
隣から翔が言う。
本来ならカウントダウンとはいえ小さな子どもが起きているのはどうかと思うが、そろそろ日本時間に体内時計を合わせることを考えたらまぁ何とかなりそうだと、斗真の立ててくれた企画に乗った翔。
「え?お昼寝?」
よくわからないという顔で智が聞いてくる。
「そう、花火があがるのが真夜中なの。
だから少し寝てからね?ちゃんと起こしてあげるから」
ちょっと考えた後、智は頷いた。
「和もだよ?」
翔たちの話を聞いていた雅紀が和也にも言い聞かせる。
「うん、わかった!」
こちらも聞き分けよく返事をした。
地下鉄を降りて、少し歩くと建物が見えてきた。
「ここだよ。ここの一室を取ってるから」
斗真が指差す先にある建物。
それはテムズ川沿いに建つホテルでテムズ川サイドに広めのベランダがあった。