第8章 お正月 <双子6歳>
「ねーあれなに?」
和也が指を指す方向にある大きな影。
「あっ、あれクジラだよ、きっと」
智が言う。
天井を泳ぐように浮いている巨大なクジラ。
その迫力に圧倒される。
恐竜やクジラ、その大きさをみると人間の小ささみたいなものを感じたりもする。
「うわーすごいなぁこれ」
潤も雅紀も翔も子どもたちと同じようにその大きさを感じていた。
同じ目線で一緒に驚きを共有できる経験。
きっとこれからもたくさんの驚きや喜び、時には悲しみも共有していくんだろうと思う。
それをする相手が居るということ…それは凄く幸せなことなんだと思った。
自分の上に泳ぐクジラをキラキラした目で見上げる智と和也。
周りにも同じように見上げる子どもがいる。
100人いれば100通りの幸せがある。
智と和也を幸せにできるように…そして自分たちも…そう願わずにはいられなかった。
「パパ?どうしたの?」
智が翔を見上げていう。
「え?どうしたって…?」
智の言う意味が分からなくて聞き返すと智は真剣な顔で言う。
「パパ…泣きそうなお顔してる。
悲しいことがあるの?」
「泣きそうな顔…してる?」
「うん」
「そっかぁ。
でも悲しいからじゃないよ?
嬉しいなぁって思ったの。
智と和と雅紀と潤と一緒にね、こうやって見れて嬉しいなぁって思ったんだよ。
これからも一緒に沢山のことをしよう」
そう笑う翔に智は大きく頷いた。