第8章 お正月 <双子6歳>
長いエスカレーターを登った先にあったのは火山のコーナー。
その一角にある看板に智と和也の目が釘付けになる。
「まーくん、あれ…『スーパーマーケット』って書いてるよ?」
「潤くん、なんで日本語があるの?」
カタカナは既に読める智と和也。
英語だらけの環境で見つけたそれはすごく不思議に見えたようで…。
「あれはね、阪神淡路大震災っていう大きな地震が日本であってね、その様子などを展示してるコーナーだよ」
翔が簡単に説明する。
事前に下調べしていた際に目にしていた情報の一つだった。
「中、入ってみる?」
翔が智と和也に声を掛けると二人は大きく頷いた。
中に入ると少し昔のスーパーマーケットが再現されている。
と突然、揺れはじめる。
「え?え?なに?」
「パパ!パパ!」
智と和也が必死になって翔にしがみつく。
翔は事前にわかっていたから慌てることはなかったが雅紀と潤の顔は強ばっていた。
この施設は阪神淡路大震災の揺れを体験することが出来る。
特になにかの合図がある訳ではなく、何分かに一度、突然揺れはじめる。
「パパ、怖い…ここ」
「まーくん!まーくん!出る…ここ出る」
翔にしがみついたまま泣き出した智と雅紀に出たいと訴える和也。
翔はすこし申し訳ないという顔をして智を抱き上げると雅紀と潤に合図してその場を離れる。
雅紀も和也を抱き上げ、その後に続いた。