第8章 お正月 <双子6歳>
お土産を手に満足そうな智と和也。
同じく嬉しそうな顔で戻ってきた潤に翔が苦笑する。
「智たちと変わらなくない?」
そういって揶揄う。
「いいの、こういうのも仕事上、役に立つこともあるの」
苦し紛れにいう潤。
それはないと思うと思いつつ、雅紀が潤と翔を促す。
そのまま、途中でランチをしてSouth Kensingtonに向かった5人はメインゲートではなくExhibition Roadの入り口から入ることにした。
その方が空いているというのである。
自然史博物館は大きく4つのゾーンにわかれている。
一番の見物はブルーゾーンにある恐竜の骨骼標本や動物の剥製などのコーナーだ。
ただ今回はExhibition Road側の入口がレッドゾーンの傍にあるのでレッドゾーンから順番に見学することにした。
レッドゾーンは地質学に関係するエリアで人類の進化や鉱物や宝石、火山活動などがメインテーマになっている。
「パパぁ、なんかここ凄いよ!」
「大きいお人形が一杯あるよ!」
Earth Hallと呼ばれるエリアにはギリシャ神話の神々の像がある。
それを見て口をあんぐりと開ける智と和也。
その先には大きな球体に吸い込まれるようなエスカレーターがある。
「ねーねー、あそこ何?」
そのエスカレーターを指差す智。
「あれ、乗りたい!」
和也は雅紀に強請っている。
勿論、それに反対する必要もないので、「じゃぁ行こうか?」という潤の声で5人はエスカレーターで上層階に向かった。