第8章 お正月 <双子6歳>
「翔ちゃん、凄いね!
テレビのときみたいにカッコよかった!」
智が目をキラキラさせながら翔を見る。
その目には明らかな尊敬があった。
「ありがとね、智。
わかんなくても良いから、たくさんのものをみようね?」
繋いだ手に力を籠める。
「うわっ、パパ、離して」
笑いながら言う智に翔も笑って応じる。
「え?どうしよう?
智の手とパパの手、くっついちゃって離れないよ?
智、離してよ?」
「パパが力籠めるんじゃん!」
いつものように二人でふざける。
こんな時間が大切だと翔も雅紀も潤も思ってる。
こうやってふざけあえる時間は長いようで短いのかもしれない。
ならば、今できることをすればいい…。
小さかった双子の成長を目の当たりにしながらそう思う翔。
「さとー、パパー!はーやーくー!」
前を歩いていた和也が二人を呼ぶ。
一つ頷いて二人は速度を上げて歩き出す。
そのまま、5人で様々な展示室を覗いていく。
ギリシャから移動させてきた大きな彫刻のコーナーではその大きさや、首などがない彫刻になんでだろうと想像したり、ミイラのコーナーでは猫やワニのミイラをみたり…。
巨大なラムセス王の石像やイースター島の石像に驚いたり…。
「ねえ、そう言えばさ…水晶髑髏ってどこにあるんだろう?」
雅紀が展示室をきょろきょろと見ながら言い出した。
「え?本当にあるの?水晶髑髏って?」
潤が雅紀に聞き返した。