第8章 お正月 <双子6歳>
潤が解説よろしくと云わんばかりの顔で翔をみる。
「俺も日本史選択だったけどね?
まぁ、仕事で勉強したりしてるから確かにここは俺が一番得意かもね?」
人だかりを少しずつ進みようやく、石碑の前にたどり着く。
ロゼッタストーンは2m強のガラスのケースの中に入っている。
「あんまり解説らしい解説がないんだね」
雅紀が石碑の近くのインフォメーションボードを見ながら言う。
「大英博物館は展示数も歴史的価値も在りすぎるぐらいあるからね。
全部解説したらとんでもないことになるんじゃない?」
潤の憶測がおおよそ正解だろう。
「智、和、これはロゼッタストーンっていってね、歴史的にすごく価値がある石なんだよ」
翔が指差す先を見る双子たち。
「この石の表面には3つの文字で同じことが書いてあるんだ。ギリシャ文字と古代エジプト語のヒエログリフっていう神聖文字とデモティックっいう普通の人たちが使ってた民衆文字とよばれる文字ね?
これが発見された当時、ヒエログリフはまだ解読されてなくて、この石碑のギリシャ文字の内容からデモティックとヒエログリフを読み解いて、結果多くのヒエログリフの文書が読めるようになったんだ」
翔の説明に頭にハテナを浮かべる子どもたち。
「あーごめん、難しかったね。
この石のお陰で外国の文字の読み方が分かったんだって」
かなり省略した説明をする翔。
「すごい石なんだね!」
和也の一言に雅紀がそうそうと言いながら頭を撫でる。
「さ、次行こう、次」
潤の一言で5人はその場を離れた。