第8章 お正月 <双子6歳>
「マーマイトもまぁ、発酵食品だもんね」
翔がプラスチックのビンを摘まむように持ちながら言う。
「確かビール酵母だったはずだよ?
あっ、最近、こんな容器出たんだぁ」
雅紀は蓋が下に付いている容器を手にしながらそれをしげしげと見る。
「外国人的には納豆は狂気の沙汰だろうけど、日本人にはこれは狂気の沙汰だよな。
アメリカ人も苦手みたいだけどね?
で、ふたりとも手に取ってるけど買うの?」
潤の冷静なつっこみに二人は手にしていた容器を静かに棚に戻した。
結局、雅紀と翔は頼まれたと言う紅茶を中心に、潤は自宅で食べたり飲んだりするためにジャムや子ども達用にクッキーなどもかごに入れ会計に向かう。
智も和也もまだ、小さい頃に翔たちが飲んでいた紅茶を飲んで以来、この歳の子どもには珍しく紅茶好きなので茶葉の消費は激しかったりする。
他にも何ヵ所かで買うつもりなのでセーブしなくてはと思いつつ結構な量を買った潤だった。
各々、結構な量を買った。
「翔ちゃんもまーくんもたくさんお買い物したね」
大人たちの両手の袋を見ながら智が言う。
「ねぇー潤くん、クッキーいつ食べれる?」
かごに入れたクッキーの行方が気になる和也。
「これ、一旦置いてきた方がよくない?」
翔が3人分の荷物を見て言う。
「じゃ、俺、タクシー使って置いてくるよ?ピカデリーに先向かってて?」
潤はそう言うとみんなの荷物を纏めて手に取り流しのタクシー捕まえて行ってしまった。