第8章 お正月 <双子6歳>
「パパ?まーくん?ねぇどうしたの?それなに?」
痺れを切らした智が二人に声をかける。
「ごめん、智。これね…ちょっとね、微妙な思い出かまあるの、これには」
翔が智の頭を撫でながら言う。
「翔さん、それ買うの?まぁ、止めないけど」
苦笑しながら後ろにいた潤が話しかける。
「あれ?もしかして…潤もこれ知ってるの?」
「うん、昔ね、兄貴がお土産に貰ったやつをね…」
「あっ、じゃあ…」
「うん、まぁ…」
潤も歯切れが悪い。
「ねーえー?」
「どうしたの?」
何度聞いてもちゃんと答えてくれない二人に膨れた顔をした智と不機嫌になってる智に不思議な顔の和也が微妙な顔の大人たちに聞いた。
「あぁ、ごめんね、これね、マーマイトっていうものでね?昔チョコレートクリームだと思って食べたことがあるんだけど…」
翔は話しながら雅紀をみる。
「とにかく独特な味なんだよね…。なんていうか…日本人の口には合わないっていうか…」
珍しく言い淀む雅紀の言葉を拾って潤が言う。
「まずいの。すごくね、まずいの。しょっぱくてドロッとしてて…」
「二人とも…食べてみる?」
「「いらない」」
大人たちの微妙な顔に危険を感じたのか、智と和也はユニゾンで答えた。
「まぁ、そうだよね?」
雅紀が頷く。
「たぶんさ、日本人にとっての納豆みたいなもんじゃない?臭い嫌がる外国人多いじゃん?」
翔が分かりやすい例えで話す。
「あぁ、そうかも。イギリス人、好きだもんね?マーマイト」
潤も頷いた。