第8章 お正月 <双子6歳>
なんだかんだで双子が起きてきた頃には日暮れ近くになっていたのでこれ以上の遠出は難しいと判断しB&Bから程近い、Fortnum & Masonまで散歩しながら向かった5人。
Fortnum & Masonといえば紅茶が有名だがもともとは食品雑貨店として始まった店なので紅茶以外にもジャムやクッキーなどお土産に適したものも多い。
「和、ジャムどれにする?イチゴ?アプリコット?あっ、レモンカードもある!」
潤は和也に声を掛けつつ自分が楽しくなってきていた。
「潤くん、レモンカードってなに?」
はじめて聞く名前の食べ物に和也が興味深げに聞く。
「レモン風味のバタークリームだよ。レモンみたいに酸っぱいわけじゃないし爽やかな風味で美味しいんだよ?」
「ふーん。僕、それ食べてみたい!」
「じゃ、一つ買おうね?」
かごに入れてる潤の横で翔が微妙な顔をしてる。
「翔兄、どうしたの?」
その顔にかご一杯に紅茶を入れた雅紀が聞く。
「これ…」
手にあったのは黄色い蓋のついた黒いプラスチックの容器。
「まさか…」
「「…マーマイト」」
思わず声が揃った兄弟。
その姿に智が雅紀のジャケットを引っ張りながらどうしたの?と問う。
マーマイト…。
英連邦の各国ではかなりポピュラーな食べ物だが、櫻井兄弟にとっては悪夢な思い出しかない。