第8章 お正月 <双子6歳>
「智ってさ、男の子なのにぬいぐるみとか好きだよね?」
潤が思い出したようにいう。
「確かに…。和の方が執着がないっていうかなんて言うか…」
雅紀も納得顔で言う。
「智、ホントにその子、連れて帰るの?ダッフィー泣かない?自分だけの智パパじゃなくなっちゃうよ?」
翔が最後の抵抗と言わんばかりの論法で智の説得を試みる。
「泣かないよ。だってダッフィーお兄ちゃんだもん。僕、一人でパパたちを独り占めするよりも和と一緒に2人でパパたちといる方が楽しいもん」
「智…」
そんなこと言われてこれ以上、抵抗できるわけが無い。
翔は和也に向かって聞く。
「和は?買わなくていいの?」
翔たちの中で大事にしているルールの一つが「平等に接する」ということ。
智にだけ買うのはこのルールから外れる。
かといって欲しくもないものを買うのも何かが違うので和也の意見を聞くことにした。
「うーん、僕はいいや。ダッフィーいるし」
和也はあっさりと言い切った。
「わかった。じゃ、智にクマくんかってあげてもいい?」
再度確認する翔に和也は頷く。
「良かったな、智。翔さん、クマくんをお家に連れて帰っていいって」
潤が智の頭に手を載せて言う。
「んじゃ、智、くださいなしに行こう?」
雅紀が智に声を掛ける。
「うん、くださいなする!」
智はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめて雅紀とキャッシャーに向かった。