第8章 お正月 <双子6歳>
その後、移動したおもちゃ売り場で何かをねだられるかと思ったが肩すかしを食らった3人。
ところが…意外なところで足止めを喰らうことになった。
Harrodsのオリジナルグッズを扱うショップに入った時だった。
智があるコーナーで足を止めそのまま動かなくなった。
「智?そろそろ行くよ?」
潤が声を掛けるが頑として動こうとしない。
「智?どうしたの?」
「潤くん…僕、この子をねダッフィーの弟にしたいの」
智は腕の中にクマのぬいぐるみを抱いていた。
なかなか来ない智と潤に一旦、ショップを出た翔たちも戻って来た。
「潤くん?さと?どうしたの?」
雅紀が2人に声を掛ける。
智が翔にくまの縫いぐるみを見せながら先ほど潤に言ったことと同じことを言う。
「ダッフィーの弟?」
翔は智のその発想について行けなくて思わず繰り返した。
「うん。ダッフィーだって弟がいたら楽しいよ?僕、和といると楽しいもん」
「でもさ、うちダッフィー2匹いるじゃん」
潤が智の顔を見ながら言う。
確かに智と和也に1体ずつ買ったので櫻井家には都合2体のダッフィーがいる。
「だって和のダッフィーは和のだよ?
僕のダッフィーの弟なのこの子は。ね?くまくん?」
なんともまぁストレートな名前でぬいぐるみに話しかける智。
「くまくんって…」
雅紀が絶句しながら聞くと智はにっこり笑って言う。
「うん、この子のお名前」
そういってくまのぬいぐるみを抱きしめた。