第8章 お正月 <双子6歳>
「潤くん、世界最初なの?」
なぜだか嬉しそうに聞く智。
「うん、そうだよ。他にも紅茶はもちろん、チョコレートも世界中のが集まってるって言われてるよ?」
潤が智に教える。
「チョコ?いっぱいあるの?」
「うん、めずらしいのもあるかもね?」
「僕、チョコ好きだよ。和も好きだよね?」
アピールしながらすかさず隣にいる和也も巻き込む智。
遠回しに買ってくれと翔たちにアピールする。
「あとねー、おもちゃ売り場もすごいんだって」
雅紀もにこにことしながら双子たちに話す。
「おもちゃ?」
和也の目が光る。
「買わされることになったら雅紀、責任取れよ?」
翔が本気だか冗談だかわからない口調で雅紀に言った。
「え?マジで?俺?」
雅紀が情けない声を出す。
それを聞いた4人は思わず声を出して笑った。
Harrodsの中を探索し始めた5人。
もちろん世界最初のエスカレーターにも乗った。
かなり広い食品売り場には潤の言ったように紅茶もチョコレートも物凄い品揃えで置かれていた。
食品売り場に入った時にチョコレートを買って貰う気満々だった智。
しかし食品売り場を歩くうちに顔色が変わってきた。
「さと?どうした?具合悪い?」
「まーくん、ここ、いや」
雅紀の上着を掴んで智が言う。
「わかったよ。とりあえず移動しようか?」
そのまま智を抱き上げた雅紀は翔たちに声を掛けフロアを一つ移動した。