第8章 お正月 <双子6歳>
地下鉄を乗り継いでKnightsbridgeの駅についた5人。
出口表示をみながら地上に出るとすぐ目の前に重厚な建物が見えた。
ロンドンの高級デパート、Harrods。
建物の正面にはかつては王室御用達の証のエンブレムが飾ってあった。
今はその痕が壁に残されているのみになっている。
「あー、ホントになくなってるね、王室御用達のマーク」
翔が建物上部の壁を見ながら言う。
「翔ちゃん、おうしつごようたしってなに?」
和也が翔に聞く。
「その辺は潤の方が詳しいと思うけど?」
翔が潤を見ながら言う。
確かに潤は商標関係をメインとする弁護士なのでこの辺りはまさに専門分野と言っていい。
翔から振られたので潤が説明する。
「イギリスには女王様がいるのは知ってるよね?」
潤の言葉に頷く2人。
「でね、イギリスでは女王陛下とその旦那さんのエジンバラ公と皇太子殿下がね、気に入ったお店とかメーカーは『御用達』っていって特別な印が貰えるの。
その印があるとさ、普通の人たちもなんか安心するから売り上げがね、伸びたりするの。
ここのデパートも以前はあったんだけどね、色々あってなくなったの」
「ふーん。じゃぁこのデパートは安心じゃないの?」
和也が潤に聞く。
「そんなこと無いよ?
中の品揃えは本当に凄いし、世界で最初のエスカレーターとかあって面白いと思うよ?」