第1章 少しだけスキャンダル<双子0歳>
櫻井翔。
テレビ日本のアナウンサー。
夕方の時間帯のニュース番組のメインキャスターであり、バラエティーでもそつのない進行をするため知名度は高い。
それだけではなく入社前から読者モデルや大学のMr.コンテストで優勝していたこともあり注目度はそもそも高かった。
結果、某雑誌が毎年行う「好きなアナウンサーランキング」で入社以来まさかの5連覇で最年少殿堂入り。
いまやテレビ日本の看板アナウンサーと言っても過言ではない人気と実力の持ち主。
そんな彼に持ち上がったスキャンダル。
マスコミ各社はこれでもかと群がった。
各社が繰り広げる報道合戦。
ヒートアップする事態についに会社として、会見を行わざるを得なくなった。
そして…今に至る。
「そして隠し子と呼ばれるような事実もまたありません」
東山の端的かつ説得力のある発言が続く。
「この事実をふまえ、これから櫻井本人が説明いたします」
そう言って軽く会釈した東山は頭を上げ、櫻井にマイクを渡し、促した。
「テレビ日本、アナウンス部の櫻井翔です。
このたびは私事でみなさまにご心配、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
今回の件に関して、説明させていただきますのでよろしくお願いいたします」
櫻井は深々と頭を下げ、心の中で7つ数えて頭を上げた。
「今回、騒がれている件ですが、先ほど東山よりお伝えした通り、私に結婚の事実はありません。
また、目撃された子どもも正確には私の子どもではありません。
あの子どもは私にとっては甥に当たります」
そこで一度黙った櫻井。
再び、マイクに向かって話し始める。