第1章 少しだけスキャンダル<双子0歳>
都内某所にある民放キー局。
会見の準備が進められ、多くのマスコミが集まっていた。
しばらくしてこの会見の主役が何人かの年長者に伴われて会場に姿を現した。
会場に彼らが入ってきた瞬間から焚かれるものすごい数のフラッシュ。
記者たちのざわめき。
会見の主役は余りの眩しさに目を閉じた。
「櫻井さーん、説明お願いします!」
「櫻井さーん、いつ結婚されたんですか?」
「櫻井さーん、あの子どもたちは?」
矢継ぎ早に投げられる質問。
櫻井と呼ばれる青年はただ頭を下げていた。
別に彼が悪いことをしていたわけでもないのに…。
司会役なのか一人の男性がマイクを手に持ち口を開く。
「みなさま、本日はご多忙のなか、弊社社員、櫻井翔の件でお集り頂きありがとうございます。
みなさまが疑問に思ってらっしゃることも含め、このあときちんと説明させていただきます。
まずは一度、お静まり頂き、話を聞いていただければと思います」
口を開いた男性はこのテレビ局「テレビ日本」の若きアナウンス部長、東山紀之。
記者たちに向かって頭を下げているものの、彼は内心は面白くなかった。
そりゃそうだ、自分のかわいい後輩がありもしないことで責められ報道の矢面に立たされ謝罪もどきをさせられようとしてるんだから…。
会場がそれなりに鎮まったところで東山が再び口を開く。
「まずは今回、一部報道で騒がれている櫻井の結婚の件ですがそのような事実はありません」
きっぱりとした口調で断言した東山。
櫻井と呼ばれる青年はまだ目線を下げたまま、微動だにしなかった。