第8章 お正月 <双子6歳>
バスが終点のTrafalgar Square近くのバス停に停まる。
5人は階段を下りてバスを降りる。
トラファルガー広場はナショナルギャラリーの目の前にある大きな広場でカウントダウンの際には多くの人が集まる。
日本人にとっては銀座の三越の入口にあるライオンの像のモデルになった像が置いてある場所と言った方が馴染みがあるだろうか?
もともとは19世紀初頭の海戦でイギリスが勝利したことを記念して作られたらしい。
大きな噴水とネルソン提督の像が目印になっている。
「パパぁ大きなライオンがある〜」
「人が登ってるよ。僕も登りたい!」
和也と智がライオンの像に向かって走り出そうとする。
日本と違って子どもの一人歩きは適さないヨーロッパ。
当然のごとく3人が捕まえる。
「和、智、お約束覚えてる?」
翔が2人に言う。
2人はすぐに出国前に散々言い含められた約束を思い出し、あっという顔をした。
「ごめんなさい…」
2人はユニゾンで翔たちに謝る。
「わかったならいいよ?
ライオン、乗るんでしょ?
ほら、行こう?写真撮ってあげる」
雅紀がすかさずフォローする。
3人はいつもこうだ。
誰かが注意したり𠮟っても全員で𠮟ることはない。
かならず誰かがフォローにまわる。
血のつながった親ならば、例えば父親と母親が一緒に𠮟ったとしても問題は無いのかもしれない。
でも…翔たちは実の親ではない。
だからこそ…常にバランスを取る必要があると3人考えていた。