第8章 お正月 <双子6歳>
智と和也は2人そろって先ほど見た衛兵の真似をしながら歩いている。
どっちかというとトテトテという足音が似合いそうな行進だが本人たちは至って真面目でそれが可愛らしかった。
「さと、かず!ここから乗るよ?」
「翔さん、これどこ行き?」
翔がバスの路線図をみながら言う。
「それ、Trafalgar Squareに行くみたい。
とりあえず観光ってことで乗るか?」
「じゃ、いきますか?」
「雅紀、和おねがいしていい?」
「 オッケー、和、乗るよ?」
「智は?パパと乗る?潤とにする?」
「うーん、今度はパパ!」
「じゃ、乗るよ。あっ、2階は立ってると怒られるから満席だったら1階で我慢しようね?」
智に言い含める。
どちらかといえば和也の方が柔軟だからこういう時でもそんなに気にしないが智はこうと決めたらそれを守りたいタイプだから。
翔は予め、保険をかけた。
幸いなことにバスは混み合って無くオイスターカードをかざして中に入りそのまま階段を上って2階の座席に座ることが出来た。
急な階段をなんとか登った智と和也は嬉しそうに席に座り、一段高いところからロンドンの街を眺める。
東京と違ってものすごく高い建物は見当たらない。
中心部を離れテムズ川の東側の再開発地域にはそれなりに高い建物も建っているようだが中心部は変わらず重厚な町並みを保っていた。