第8章 お正月 <双子6歳>
腕の中の智と和也は重くなったけどその分荷物は軽くなったと思う雅紀と潤。
二人は翔の一言で熱くなった頬を冷たい冬のロンドンの風で冷やしながらそんなことを話していた。
3歳近くまではベビーカーは必携だったし、抱っこ紐だってオムツだって着替えだって常に人の2倍。
しかも最初の頃は心配性の翔がこれでもかと荷物を増やしていたから子連れのお出掛けは一騒ぎだった。
それに比べると今はかなり楽になったと思う。
翔の荷物の多さは相変わらずだけどそれでもだいぶ、スリム化された。
【現地調達】も臨機応変に行うことを覚えたからだろう。
子どもの成長とともに親も成長する。
そういうことなのかもしれない。
辿り着いたB&B。
「んじゃ、俺、行くね?明日どうするか決まったら教えて?」
斗真が停めてある車の方に行きながら言う。
「あっ、うん。ありがとう。ってかお前仕事は?」
「あるよ?もちろん」
「じゃ、忙しいんじゃん!
俺たちのことはいいからさぁ、早く帰って休めよ」
「あははは、やっぱサクショーは変わんないね。
仕事はお前らの観光案内」
「はぁ?」
翔がまったく理解できないという顔で斗真をみる。
潤と雅紀もだ。
「東山部長からうちの支局長に連絡が入ったの、『うちのエースが天使連れてロンドンに行くからたっぷりもてなしてあげて』って。
駐在にはそういう役目もあるからね?」
斗真が笑顔で普通に言う。