第8章 お正月 <双子6歳>
ロンドンの地下鉄はまるでトンネルに沿うように出来ている。
東京の地下鉄とは違って車内は完全にドーム状だし、とにかく天井が低い。
「翔ちゃん、すごい!つり革がボールみたい」
早速、智が車内を見て嬉しそうに報告する。
「あぁほんとだね、日本のとは違うね?」
「潤くん、なんでお椅子が向き合ってるんだろう?」
都内を走る地下鉄でもたまにあるがロンドンの地下鉄は一部がボックスシートになっている。
「そうだね…なんでだろう?」
理由がわからない潤はそのまま和也に返す。
「みんな仲良くしたいからじゃない?」
ニコニコしながら智が言う。
日本との違いに興奮しているのか本来ならすでに寝ている時間なのに元気な2人。
夕食前にありがたいと言えばありがたいけど…。
ちょっと複雑な心境の翔。
そんな兄を見て雅紀は心配しなくていいとばかりに肩に手を置いた。
あっという間に目的のLeicester Squareに到着した。
駅を出て通りを入るとそこには明らかにロンドンと違う風景が広がっていた。
チャイニーズレストランが軒を連ねているが途中途中に中華食材を売るスーパーや本屋、レコードショップなども混じっている。
そのなかから斗真がお勧めだという店に入った。
チャイナタウンのメインストリートから少し入ったその店は間口とは裏腹にとても広い店だった。