第8章 お正月 <双子6歳>
ロンドンの地下鉄は深いところに駅があることが多い。
小さな入り口から地下に降りていく。
改札は日本同様、自動改札だ。
「サクショー、オイスターカード、手配済み?」
斗真が確認するように翔に声をかける。
「いや、間に合わなかった」
「じゃ、これつかって?」
斗真が3枚のカードを大人たちに差し出す。
「翔兄、なに?そのオイスターカードって」
「日本のSuicaみたいなもん。
って説明で大丈夫だよね?」
翔が確認するように斗真をみる。
「そう、会社で訪問者用に用意してるやつ借りてきた。
もちろん、チャージは会社の金使ってないから安心して?」
「あっ、あとで払います」
今回の会計担当者、潤が斗真に言う。
「いいよ、これぐらい」
「じゃ、今日の夕飯は俺たちが出します。
ってか、出すから奢られてください」
斗真が翔に視線を向ける。
素直に奢られとけと翔が目で合図する。
それを見て斗真は頷いた。
「じゃ、ちょー高級店行っちゃう?」
「え?マジ?」
瞬間慌てる潤に斗真が笑う。
「うそうそ。
ロンドンのチャイナタウンはさ、そこそこの値段でかなり旨いの食べれるから。
ちびたちも食べやすいところにしよ?」
その斗真の一言に智と和也が抗議する。
「「僕たち、ちびじゃないもん!!」」
見事なユニゾン。
怒った顔の双子と困り顔の斗真。
それを翔たちが笑いながら見ていた。