第8章 お正月 <双子6歳>
機内がにわかに騒がしくなる。
それまで落とされていた機内の灯りが再点灯され明るくなる。
周りの音に双子たちも目を覚ました。
「智、起きた?」
「うん、しょーくん、おしっこ」
「一人で行ける?」
すぐ目の前にあるトイレを指す。
「うん、大丈夫」
「中に入ったらロックするんだよ?」
「はーい、行ってきます」
智が翔の前を通ってトイレに行く。
その後ろを和也も着いていった。
「智、待って、僕も行く!」
結局二人は一緒にトイレに入っていった。
翔はハラハラしながらそれを見守っていた。
しばらくして二人で出てきたのを見て安堵した翔。
そんな心配性の兄を雅紀と潤がにこにこしながら見ていた。
到着前の軽食が配られる。
「パパ、僕、いらない。
ジュースだけでいい」
智が隣に座る翔に言う。
和也も袋を開けたもののほとんど食べていない。
「和もいらないの?」
「うん…ずっと寝てたからお腹空いてないみたい…。
ごめんなさい」
残したことを叱られると思ったのか和也はかなり早い段階で雅紀に謝った。
「ふふふ、そうだよね。
いっぱい寝てたもんね?
でもジュースは飲もうね?
そしたら映画見てていいよ。
ミッキーも見れるみたいだよ?」
機内用のエンターテイメント雑誌を見せながら雅紀が和也に笑いかける。
「まーくん、僕、ドラえもんがいい」
「いいよ、じゃヘッドフォンしてね?」
雅紀が手早くリモコンを操作してチャンネルを合わせた。