第8章 お正月 <双子6歳>
飛行機を見ながらはしゃぐ子どもたちをキッズコーナーへと誘導した翔。
雅紀が3人分のコーヒーを買ってきた。
3人は紙コップを手に子犬のようにはしゃぎまくる二人をみていた。
ほかにも何人か子どもがいてその子たちとなかよく遊ぶ姿をみる。
「なんか大きくなったね、和もさとも」
「そうだな。あんな風に他所の子とも遊べるようになったもんね」
翔が目を細めて言う。
「そりゃそうでしょ?4月から小学生だよ?」
潤がキラキラした笑顔を浮かべて言うのを雅紀は見ながら言った。
「あっという間だね、子どもの成長って」
「ホントだよなぁ…あんなに小さかったのにな」
翔はちょうど6年前の双子を思い出す。
保育器に入り退院を待っていた二人。
絶望と覚悟と期待と不安が入り交じったあの日のことを。
「翔兄?どうしたの?」
「ううん、なんでもない。
ちょっと昔を思い出しただけ。」
「翔さん、なんかじじくさくない?」
「潤ひどくない?それ俺とたいして
歳、変わらないじゃん?」
「俺は翔さんみたいにじじくさくないもんね」
「翔兄、そろそろ時間じゃない?」
「優先搭乗、するんでしょ?」
「うん、手配したよ。さすがにファーストやビジネスは取れなかったけど、プレミアムエコノミーにはしたからね?」
「ってか、あんな小さいうちからビジネスはダメでしょ?」
当たり前という顔で潤が言う。
「そりゃそうだ、変な贅沢覚えてもまずいもんね」
雅紀も真面目な顔で言った。