第8章 お正月 <双子6歳>
「まーくんお帰り!僕たち飛行機の準備、終わってるよ!まーくんは?」
和也が興奮ぎみに雅紀に言う。
「大丈夫、終ってるよ。ちゃんと薬も持ってきたしね?あ、寝る前にもしもしね?」
「もしもしするの?」
智が不安そうな顔で言う。
「念のためだよ?大丈夫、優秀なお医者さんと一緒だから、旅行、楽しめるよ?」
「自分で優秀とかいうかなぁ」
潤がツッコミながら雅紀と翔の夕飯を用意する。
双子たちも食べ終わったので自分たちが出来る手伝いをしている。
「パパ、もう、お仕事終わり?」
智が翔の膝に抱きつきながら聞く。
「今年の仕事は終わったよ。新年は4日からね?」
「翔さん、ようやくまともな人間らしい休み取れるようになって良かったね?」
「ブラック企業みたいな言い方すんなよ。うちの局はまだ、マシな方だと思うよ?」
「翔兄、フリーになんないの?」
「予定なし。会社員の方が案外、融通利くしね?そう言うお前は?開業とかしないの?」
「まあさ、将来的には考えたいけど、今はまだ、大学病院のほうがいいんだよね。臨床も症例が多いし学会で論文出すのにしても環境が整ってるしね?」
「で、翔さんは準備出来てるの?」
「俺?うん、ほぼ終わってる」
「空港の駐車場は予約済みだから。スーツケース、明日の朝でいい?」
「それでいいんじゃない?あっ、二人ともお風呂入っておいで」
翔が会話の間に促した。