第8章 お正月 <双子6歳>
「智くんも和くんも楽しんできてね!」
「うん!」
双子は伊野尾先生から声をかけられて嬉しそうに返事をする。
「あのねー、飛行機に乗るんだよ!」
「飛行機ね、ゲームができるんだって!」
二人はこれから過ごす冬休みのことを話す。
それをニコニコと聞く伊野尾。
「いいなぁ、帰ってきたらたくさんお話、聞かせてね。
あっ、あと新年からお昼寝無くなるから、シーツ、忘れずに持って帰ってね?」
就学準備で今まであった昼寝の時間が新年から無くなる年長児。
毎週持って来ていたシーツやお昼寝タオルも不要になる。
双子と潤は大荷物を持って帰路についた。
帰って夕飯を食べる頃に雅紀と翔がそれぞれ戻ってきた。
師走のテレビ局員は忙しい。
4月、10月の改編期も忙しいがここは自分の番組に変化がなければ実はそこまででもないが、12月は特番の数も多いし、番組制作自体が止まるのでその皺寄せが前倒しでやってくる。
翔は12月に入ってから深夜の帰宅や早朝の出社、日帰り出張など本当に忙しい日々を過ごしていた。
それもこれも昨日のクリスマスイブから年始にかけて休みを取るためだった。
ここ何年かは年末年始の緊急時の生放送用のスタッフとして正月休みのなかった翔。
入社して約10年、ようやくその役割を後輩たちに任せられるようになり、休みを取れることになった。
そして、雅紀も医師として中堅と言われる年齢になり、普段とれない有休をつかってのんびりとした正月休みが取れるようになった。