第2章 Family ~ひとつになること <双子0歳>
相変わらず難しい顔の翔を見た松岡は翔の前に立つと突然…両頬をつねって引っ張る。
「いたたたたっ!なにするの!松兄!」
いきなりつねられた翔は当然ながら抗議の声を上げる。
「なにするのってお前、怖い顔してるんだもん。
それじゃ智も和も泣いちゃうじゃん?」
「だからって!」
「そんなに肩に力入れるなよ、これから先、長いんだぞ?」
ニコニコ笑いながら言う松岡。
その目に真剣な光を宿し続ける。
「人ひとり、じゃないふたり育てるんだろ?
今からそんなに肩に力入れてたらすぐに疲れちまう。
もっと楽にいけよ?
お前一人じゃないだろう?
雅紀も潤もいるんだし俺だっているだろう?」
そう言いながら翔の肩を揉む松岡。
「いつもは撫でてる肩が上がってんじゃん?」
揶揄う松岡に拗ねた顔をする翔。
主治医としてというよりは翔の先輩として、兄のような立場で話をする松岡。
「そう拗ねるなよ。
今朝の診察でも問題なかったから…。
智と和、もう来るからさ」
双子を連れてきた看護師に声を掛ける。
双子が看護師に抱かれてこちらにやってくる。
「智くん、和也くん、パパたちがお迎えにきてくれたよ」
看護師はそう双子に声をかけながら智を翔に渡す。
和也は雅紀が抱いた。
翔のぎこちない抱っこにも動じない智。
雅紀はさすがに手慣れたもので危なげなく和也を抱く。
潤が荷物を受け取った。
智と和也は無垢な笑顔を振りまく。
5人が新たな道を踏み出した瞬間だった。