第2章 Family ~ひとつになること <双子0歳>
そして土曜日。
休みをもらっていた雅紀と潤と共に病院に向かう。
いままでとは違う気持ち。
これまでは何度見舞いに行っても帰りは大人だけ。
でも今日は違う。
智と和也と一緒に帰れる。
二人は俺を…俺たちを受け入れてくれるだろうか…。
この期に及んでも不安がよぎる翔。
「翔にい…顔、怖いよ?」
雅紀が兄に声をかける。
「そんな顔してたら和もさとも引くから」
雅紀の容赦ない言葉が続く。
「そんな怖い顔してる?」
「うん、翔さんがバラエティー番組で時々見せるヤバイ顔よりもヤバイかも」
潤も言う。
自分の顔を触りながら「俺、そんなにテンパってる?」と聞く。
二人は頷きながら「うん、真顔過ぎて怖いよ」と答える。
そんなことを話していると双子の主治医の先生がやって来た。
「松岡先生!」
雅紀が声を掛ける。
一応、院内なのでオフィシャルな呼び方で呼ぶ。
松岡と呼ばれた医師は一見、強面にも見えるきりりとした和風のハンサム。
双子のNICUでの主治医である。
雅紀が担当できれば良かったのだか研修が終わって一年目の雅紀には院内の規定で、NICUの患者を担当する資格がなかった。
そこで雅紀の指導担当医の松岡が双子の主治医になったという経緯があった。
「雅紀、お疲れ!手続き、終わらせた?」
雅紀に声を掛けるとそのまま目線を翔と潤に向ける。
「潤も来たんだぁ」
「そりゃ来るでしょ?
松兄、相変わらす元気だね?」
潤は気さくに声を掛ける。
「元気じゃないとやってられないよ、医者なんて」
「そういうもの?」
「そういうものでしょ?
だって元気じゃない人に診察なんてされたくないだろ?」
「あぁ確かに」
雅紀にとって松岡は職場での先輩だがそれ以前に大学の先輩でもある。
雅紀の大学の先輩ということは…当然、翔にとっても潤にとっても大学の先輩にあたる。
翔たち兄弟とは中学から同じ学校なのでかなり長い付き合いになる。