第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
「智、また泣いちゃったの?」
和也が智の方を見ながら言う。
「また?」
翔が不思議そうに和也が言った一言を拾う。
「うん。智ね、僕に負けるとすぐ泣いちゃうの」
和也がもはや当たり前のことのように言う。
「和くん違うよ、さとちゃんはね誰に負けても泣いちゃうの。
負けるのほんと、嫌いだよね?」
近くにいた侑李がさらに追い討ちをかける。
一度引っ込んだ涙がまた、智の目を濡らす。
「和のいじわるぅ~。ゆーりのばかぁ~。
二人ともきらい~~!」
顔をぐちゃぐちゃにして泣く智。
翔が落ち着かせようと間に入る。
「あーあぁ、智くん?泣かないよ?
みんなビックリしちゃうよ?」
「大丈夫だよ、さとくんパパ!みんな慣れてるから」
新たな声に翔が振り返るとそこにはキラッキラの笑顔の涼介。
「涼介!そう言うこと言わないの!」
すかさず、莉那がたしなめる。
「さとくんは繊細なんだもんね?
でも、もう泣き止もうか?
まゆ先生たち、待ってるよ?」
莉那の声に顔を上げた智。
ぐっと唇を噛みしめて頷いた。
さすがに、多くの親たちに見られたところで泣くのが恥ずかしくなったから。
タイミングよく和也がハンカチを差し出す。
それを笑顔で受け取ると小さな声でありがとうと言う智。
みんなで急いで集合場所に向かった。