第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
「右、左、右、左っ」
智が真剣に呟きながら足を出す。
潤もそのリズムと歩幅に合わせながら智のリードに任せる。
「和くんがんばれ!」
「さとちゃーん、早い!」
「和、追い付かれちゃう!!」
「智くん凄い!!」
子ども達がそれぞれ智と和を応援している。
最早チームは関係なく応援しているようで、応援する側も大いに盛り上がっている。
和也は翔の手をぎゅっと握り真剣に前を見つめながら進む。
このまま行けば今回の勝負は和也の勝ち。
仲のいい双子だけどどちらも負けず嫌い。
要領がよく、天才肌の和也と、黙々と努力し自分のものにしてしまう秀才形の智。
勝負の場では小さいことでも真剣な二人。
智がすごい勢いと集中力でどんどん差を詰める。
もう追い付くというところで転んでしまった智。
その間に和也がゴールする。
智はなんとか立ち上がってゴールした。
潤が足に結んでいたハチマキを取っていると上から水が落ちてきた。
智が静かに声を殺して泣いていた…。
「うっ…うっ……。んくっ、んっ、んぅ…」
「智…泣くなよ?いっぱい頑張ったじゃん」
潤が智の頭に手を置いてゆっくりと慰めるように撫でる。
「んくっ、でも…負けちゃっ…よ?」
「うん、でも智一人のせいじゃないだろ?
たまたま今回負けただけじゃん?
次にまた頑張ればいいと俺は思うよ?」
まだ悔しそうな顔をしている智。
そこに翔たちがやってきた。