第2章 Family ~ひとつになること <双子0歳>
新車を納車したディーラーの担当者が言う。
「お預かりします。
今後ともよろしくお願いします」
それを合図にお互い車を乗り換える。
荷物を後部座席入れ、一つ会釈をして車を出した。
明日、双子を迎える。
双子の父親になる。
正直、実感はない。
そんな簡単に父親になれる訳でもない。
当たり前だ、翔は独身なんだから。
普通に結婚し、父親になる男性だって女性とは違ってなかなか実感が湧かないという。
まして、独身でしかも実の子どもでもない双子を引き取るわけだから…自覚を持てという方が酷だろう。
それでも…翔は少しでも早く父親になりたいと思った。
そこでまずは形からと車を替えたのだ。
新しい車のシートに収まり運転席から背後を見る。
2つ並ぶ、真新しいチャイルドシート。
明日、そのシートに双子が並ぶのを想像する。
それはとても心暖まる光景な気がした。
真新しい運転席で気持ちも新たになった翔は自宅に向けてアクセルを踏む。
首都高から眺める東京ベイサイドの景色は抜群だと思う。
すぐには無理でもそう遠くない未来、家族でドライブするのも悪くない。
心に浮かぶ不安と新たな家族を迎える喜び。
正直、今は不安の方が大きい。
ちゃんと育てられるのか?
それ以前に日々の生活にすら不安がある。
きっとすぐにはひとつの家族にはなれないけど…徐々に家族になれればいいと思う。
不安を打ち消すように…強く思った。