第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
「かーずぅー!!」
智が大きく手を振りながら、和也のいる滑り台の方に向かって走っていく。
「さとー!まってたよー!ね、一緒に滑り台、しよ?」
和也が智の手を引っ張って列に並ぶ。
「智、リュックサックちょうだい、持っててあげる」
雅紀がそんな二人に声を掛けた。
「まーくん、ありがとう!」
智は素直に雅紀にリュックサックを渡す。
リュックサックに付けられたばかりのキーホルダー。
雅紀が手に取る。
「さとちゃん、いいの出来たじゃん」
並んでいる二人の横に付き添う雅紀が言う。
「さとちゃんじゃない!さとくん!僕、男の子!」
全然違うところに喰いつく智。
「ごめん、ごめん、智。悪気はないよ?俺」
智だって分かってる。
ただ、今日は遠足で友だちが沢山いるからいつもよりもお兄さんぶりたいだけだ。
「いいよ、まーちゃん」
にこっと笑う智。
ちょっとした復讐のつもりみたいだけど…それがかわいいってわかんないかなぁと思う雅紀。
こんなところを見せられたらとてもじゃないけどこの子達と離れることなんて出来ない。
「さと、先にやっていいよ!」
順番が近くなって和也が智に順番を譲った。
智は素直にありがとうと言って滑っていく。
「和、カッコいいじゃん!」
雅紀の一言に和也が言う。
「だってお兄さんだから!」
その笑顔は輝いていた。