第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
腕のなかの小さな暖かい命を見つめる。
なにがあってもこの二つの命を守ると…。
それは結婚とかよりずっと自分にとって価値のあることで…。
けして、自分自身を犠牲にするとかではなく単純に智と和也の父親になりたいと思った。
二人に会うまでは長男としての責任感だったが、命の重さを感じたとき、全てが変わった。
その時に決めた。
二人が巣立つまで…二人の家族として、父親として守り続けることを…。
あれから6年。
ほんと大きくなったよなぁ。
手を繋ぎ、横にいる智と前を歩く和也に目線をやりながらそんなことを思う翔。
成長を嬉しく思う一方、寂しくも思うのは親のエゴなのか?
「翔ちゃん?どうしたの?」
智が不思議そうな顔をして、過去に思いを馳せる翔を見つめる。
「ん?あぁ、ごめん。なんでもないよ?二人がお兄さんになったなって思ったの」
「さと、お兄さんだよ?もうすぐ1年生だもん!」
「そうだね?ランドセルも注文したもんね?」
「うん!早く来ないかなぁ…」
嬉しそうに弾むように歩く智。
もう、次の4月には小学生になる。
時が過ぎる速さを改めて感じた翔は、自分の手を握る智の小さな手をぎゅっと握る。
握り返してくる手に幸せを感じた。