第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
「ローズ組さん!」
まゆ先生のハキハキした声。
子ども達は先生の呼びかけの声に「はい!」と返事をする。
数年前までは返事だって「はあい♪」という可愛らしいものだったのに年長になると変わるらしい。
ちいさな成長の積み重ねが日々を作ってるんだとこんなときに実感する…。
「お写真撮るので風車の前に移動します。お父さん、お母さんと手を繋いで歩きましょう」
まゆ先生の声に再び、「はい!」と返事が返る。
智は翔の手をぎゅっと握った。
その素直な反応になんだか嬉しくなる翔。
これから先、成長とともに親離れしていく子ども達。
成長とともに様々なことを考えるようになるだろう。
普通の家庭とはすこし、いやかなり違う環境の櫻井家。
独身男3人と幼児2人…バランスが取れているようで、その実、危ういバランスなのかもしれないと翔は思っている。
雅紀にしても潤にしても…あれだけいい男が恋愛のひとつもしないのはおかしいだろうと…。
口に出したら一気に崩れそうで言えないが…いつかこの形が変わる日が来ることを翔は常に覚悟している。
翔自身は今のところ結婚の意思どころか恋愛する気さえもない。
6年前、暖かな二つの命を自分の腕で抱いたときに決めた。
『結婚はしない』と。