第2章 Family ~ひとつになること <双子0歳>
しばらくして1台のミニバンがやってきた。
静かに翔の立つ場所の傍の駐車スペースに停車させる。
そのミニバンの運転者に軽く会釈をした翔。
出てきた人物が声をかける。
「櫻井さん、お待たせしました。
こちらがキーになります」
そういって箱形のキーホルダーの様なものを翔の手のひらに落とす。
「こちらこそ、こんなところで納車なんてすみません」
「いえいえ、お客様のご指定場所で納車はよくあることですからおきになさらず」
「ありがとうございます」
「2列目にチャイルドシートを2つ着けておきました。
青と黄色がご指定でしたよね?」
「はい、そうです」
「チャイルドシートの説明書や保証書は車の車検証と一緒にダッシュボードに入れてあります」
「いろいろとありがとうございました」
一礼する翔。
そしてキーケースに付けられてきた鍵を1本外し、他にもう1本、ポケットから出した鍵と一緒に男性に渡す。
「あの車の鍵です。
あとの手続きをよろしくお願いします。
なにかあれば連絡してください」
翔が渡したのは今朝まで運転していた車のキー。
それまで乗っていたセダンでは双子を乗せて皆で出掛けるには手狭なのでこの機会にミニバンに乗り換えた。
ミニバンといっても3.5リッターの4WD、7人乗り。
アナウンサーという華やかな職業の割には地味な生活をしている翔。
今回は大奮発して最高級仕様車を選んだ。
安全性を最重視した結果だった。
事故で両親を失った子ども達。
これ以上、車に起因する辛い思いをさせたくなくて…。
拘った結果がこれだった。