第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
そんなやり取りがあってしばらくして…いよいよ親子遠足の前々日。
保育園帰りに双子達とスーパーに寄った潤。
遠足用のお菓子を買いに来た。
とくに金額に決まりはなく、食べられる分というなんとも曖昧な指定。
とりあえず、選ぶのも経験だろうとお菓子売り場に来てみた。
普段、余りお菓子を買わない櫻井家。
そもそも保育園にいる平日はお菓子を食べることがほとんどない。
土日などのおやつはもっぱら頂き物のお菓子。
翔と雅紀は職場で、潤はクライアントや事務所スタッフから「双子ちゃんに」と貰うことが多いのである。
なので、ほとんど立ち寄ることのないお菓子売り場。
二人ともたくさんのお菓子に興奮ぎみである。
「じゃ、二人ともバスの中とお昼のあとに食べるお菓子を選んでいいよ。
ただし、食べれる分だけね?」
「はーい」
ふたりともたいへんいいお返事で棚を見上げる。
二人の選ぶ様子を見守る潤。
こういうところで智と和也の性格の違いが出る。
さっさと目星をつけてお菓子に手を伸ばす和也。
一方、智は全く動かず思案している。
ちゃっちゃと潤の持つかごに欲しいお菓子を放り込んで行く和也。
智は動く気配がなかった。