第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
「さと…こまさんのお弁当がいい…」
まだ諦めてない智。
「だから、智くん、パパ言ったよ?
潤にだって苦手なことがあるって…
あのね、ご飯にしろお弁当にしろ作ってもらって当たり前じゃないんだよ?」
「だって約束したもん!
ローズさんになったらこまさんのお弁当って…。
親子遠足でたべるって…」
そこまでいうと泣き出した智。
その姿に潤が「わかったよ」と降参しようとするのを翔が止めた。
「潤、大丈夫。
そこ、智が泣いてもブレないで。
泣いてもさ、どうにもならないことがあるんだからさ」
「でも…曖昧にしてた俺も…。だから、ね?」
潤は泣いてる智の方を見て言う。
「智…泣かないで。俺さ考えるから。
もしかしたら智が思ってるのみたいにならないかもしれないけど、頑張るから…ね?」
「潤くん…」
グズグズと泣きながら潤を見る智。
それを翔が厳しい顔でみている。
「智くん、ちょっとパパとお話しようか?」
智の顔色が変わる。
翔の顔と声音に泣き止む智。
そのまま後ろに後ずさる。
「智くん?」
「やだ!パパ嫌い!」
そういうと智は駆け出し、自分の部屋に閉じ籠もる。
「智くん!出ておいで!」
「やだー」
二人のやり取りを苦笑しながら見守る潤と和也。
このあと親子の攻防はしばらく続いた。