第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
「約束はしてないよ…考えるとは言ったけど」
潤が苦しそうに呟く。
あっ、そのパターンね?と翔は思う。
子どもってそのへんの細かいニュアンスは通用しないもんね…。
「それにしても二人ともよく1年も前のこと覚えてるね?」
感心した風に言う翔に潤は苦笑しながら言う。
「こいつらさ、事あるごとに『お弁当』って記憶、アップデートすんだよ?
忘れるわけないじゃん?」
「あっ、そういうことね…」
翔も苦笑いしながら二人に話しかける。
「ふたりともさ、潤にだって苦手なものもあるんだよ?
別にキャラ弁じゃなくても良いだろ?
潤のお弁当、いつもすごく旨いじゃん?」
「うん、潤くんのお弁当、美味しいから僕、好き!
…だからキャラ弁じゃなくても…いいよ?」
なんとなくだが自分のなかで何かを納得させるような口調の和也。
和也はなんだかんだ言いつつもどちらかと言えば空気を読むのが上手い。
だからこういうときはすっと退くことも出来る。
問題は…こっち。
智の方だ。
今も全く納得していない。
口を尖らせ明らかに不満だと表情で言っている。