第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
やっぱり…忘れてないよ…ね?
深い溜め息をつきそうになって慌てて飲み込んだ潤。
それを見ていた翔が「なにそれ?」と当然の如く聞いてくる。
「親子遠足のお弁当!去年のローズさんの凄かったんだよ!」
和也が当たり前のことのように話す。
「だからね、僕たちのも可愛いのがいいの」
フニャッと、笑いながら軽くハードルを上げる智。
「かずぅ、ふなっしーよりチーバくんの方が良くない?」
「ええ、それなら僕、妖怪ウオッチがいいなぁ」
「さとは仮面ライダー!」
「あっ僕、ミッキーがいい!」
「えー新幹線は?」
口々に言う智と和也。
上がる子供たちのテンションに比例して顔色が悪くなる潤。
ここでようやく翔は、潤がのみ込んだ溜め息の理由に気がついた。
「二人とも、ワガママ言わないの。
あのね、二人分のお弁当作るだけでも大変なんだよ?
親子遠足の日は家族全員分必要なんだから全部で5人分だよ?
作ってもらえるだけでもありがたいのにそう言うワガママはよくないとパパは思うけど」
「だって…約束したよ?」と和也。
「それほんと?」
翔が潤に確認する。
もし約束してたとなるといささか話が変わってくる。