第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
その日はいつものように潤と昼前に家に帰ってきた雅紀が双子のお迎えに行った。
雅紀は廊下に貼り出されていた写真を珍しげに見ながら智と和也が出てくるのを待っていた。
「先生、さよならー」
智と和也の声が聞こえて扉が開くと二人が勢いよく飛び出してきて雅紀にぶつかるように抱きついた。
「うわっと、ふたりとも大きくなったんだからまーくん、倒れちゃうよ?」
全然そんな素振りも無いくせに口ではそんなことを言う雅紀。
「まーくん、強いから大丈夫!」
ニコニコしながら和也がなんの根拠も無いことを言う。
「ねー、まーくん、なに見てたの?」
智は雅紀の言ったことを完全にスルーして逆に質問をぶつけた。
「えっ?ああ、この写真?これなに?」
曖昧に答える雅紀が発した問いに二人は元気に答える。
「それねー、ローズさんの親子遠足!」
「さとたちも、ローズさんになったら行くんだよ!」
ローズさんとは年長組のクラス名。
この保育園ては横文字の花の名前がクラス名になっている。
「ローズさんいいよねー?和も早くローズさんになって親子遠足行きたい!」
「さとも!だってねー大きな公園でいーっぱいあそべるんだって」
「でね、お弁当も持ってくんだよ?見てみて、潤くん!准一くんのお弁当、ポケモンなんだよ」
和也が指さしたのは所謂キャラ弁だった。