第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
それはおよそ1年前のこと。
保育園の廊下に貼り出されていた沢山の写真。
この保育園では当たり前の光景。
智と和也が通う保育園では先生方がよく写真を撮る。
もちろん、安全第一で目配りをしながらだがほんの少しの隙間を縫って普段の活動をカメラで切り出す。
その様子は拡大されて、カラーコピー出力されて廊下に貼り出される。
保護者にとっては行き帰りのちょっとの時間に見ることが出来るこの写真が癒しであり、楽しみだったりする。
「せんせー、これ、ここでいい?」
「ここ押さえとくね?」
「なんかちょっとななめになってるよ!」
年中ぐらいになると貼り出しの手伝いを子どもたちがすることもある。
子どもたちにとっても楽しい時間だったりする。
その日、廊下に貼り出されていたのは年長組の親子遠足の写真。
年長組の恒例行事でバスに乗って遠くの大きな公園や牧場に行く。
保育園は日中、仕事や学校、病気などの事情で日中、保育出来ない子どもの福祉の為の施設と定義付けられているので教育目的の幼稚園とはそもそも存在の前提が違う。
幼稚園ては年少から当たり前のようにある親子遠足も保育園では特別になるケースが多い。