第6章 ボクラノリアル <双子5歳>
智の声に顔を上げた和也。
潤の顔を見て逃げようとする。
自分のやったことを分かってるってことだと潤はその様子を見て逆に安心した。
「和?怒ってないよ?
先ずはお手伝い終らせてきな?」
あとずさりした足を止めた和が潤の声に小さく頷くとお手伝いを頼んだのであろう担任のまゆ先生のもとへ行く。
和也に続いて智も歩いていった。
二人はまゆ先生に絵本を渡すとサヨナラの挨拶をする。
「せんせい、さようなら」
「和くん、智くんお手伝いありがとう。
また、来週ね?さようなら」
その声にパタパタと走ってくる双子。
とりあえず、その場では涼介との件はなにも言わず帰ることにする。
「ほら、ふたりとも行くぞ!」
「うん!」
元気に返事をする二人。
歩き出す二人を見て侑李が声をかけてくる。
「さとくん、いっしょに帰ろう?」
その声に智は「いーよ、帰ろう?かずもね?」とにっこり笑って言う。
「いや、ちょっと…」
止めようとする潤の声を振り切って侑李は智の手を取ると下駄箱に向かう。
その後ろを追う和也とさらに涼介まで追い掛ける。
智と和也を追うように部屋を出る潤。
担任に挨拶した侑李と涼介の母親たちも玄関に向かった。