第6章 ボクラノリアル <双子5歳>
いつもなら、クラスの部屋に入るとすぐに抱き付いてくる智と和也。
それが、今日はすぐに来ない。
それが意味することは多分、女の子達が言ったことは事実なんだろうと潤は思う。
そこへ担任の伊野尾がやってきた。
4歳児クラス、いわゆる年中クラスになってからこのクラスを受け持っている伊野尾。
柔和で甘いマスクの青年はクラスのママ達曰く【イケメン】で他のクラスの保護者から羨ましがられている。
優しげな印象がともすれば頼りなく映るが、叱るときは叱るらしくメリハリはあるみたいである。
年度がわりの時期、一時的に纏まりがなくなり、落ち着きも無くなったクラスも伊野尾がクラスに慣れるに従って落ち着いていった。
伊野尾は潤の顔をみると真剣な顔で今日の出来事を伝えてきた。
「松本さん、今日なんですけど…」
「和が涼介君を叩いた件てすか?」
「はい、すみません。
その前から少しぶつかってたのに、こちらで上手く中に入れなくて」
伊野尾は申し訳なさそうな顔で潤をみた。
「和くんも理由なく叩いた訳じゃないんてす。
その前に涼介君が智くんにちょっかいを出してて。
和くんが何度も止めるように言ってたけど涼介君も止まらなかったみたいで」
「あぁ、なんとなくわかります」
潤はその様子を思い浮かべて伊野尾に言った。