第5章 Fantastic Version <双子2歳>
「なんか重くなった気がする」
翔が腕の中の智を抱き直しながら言う。
「翔さん、そりゃそうでしょ?もうすぐ3歳だよ?」
「でも、あの保育器の中の二人からしたらさ…」
潤の言葉に腕の中の温かい命を愛しく思いながら初めて双子に会った日を思い出す。
「確かに大きくなったよね?
最近は二言目には『いや』だもん、参るよね?」
雅紀がのんびりという。
参ると言ってる割りには全然大変そうじゃない。
「魔の2歳児ってやつでしょ?」
「このまま、悪魔の3歳児になるよ?」
潤の一言に雅紀が恐ろしいことを言う。
「それ、勘弁してほしいなぁ。
さっきの智だけでもかなり手強かったのに…」
翔が真顔で言う。
「まぁ、仕方ないんじゃない?
成長の過程ってやつだと思うよ、翔兄」
「分かってるけどさ…」
呟く兄の肩を軽く叩いて、ドンマイと下手なウインクをする雅紀。
「きっとさ、喉元過ぎれば…ってやつだろうけど、実際、渦中にいるとそんな余裕ないよなぁ」
翔が日頃の子ども達との関わりを思い出しながらボソッと言う。
「まぁ、俺たちもまだ、親になって3年経ってないんだから仕方ないんじゃない?」
雅紀がいうのを聞くとなんだか不思議と楽観的な気分になる。
昔から何度となくこの弟の物言いに救われてる翔。
今日もそんな気分になる。