第5章 Fantastic Version <双子2歳>
「やー!しゃと、おうまとせかいじゅう!」
智が聞かない。
やだやだと繰り返すばかり。
普段、こんな時間まで外にいることは滅多にない。
しかも家族皆が揃っている。
小さくてもそのことがとても特別なことのように感じている智。
そして、朝から保育参観にディズニーランド。
しかも、予期せぬタレントデビュー。
その興奮と疲れで眠気がピークになっていた。
眠さと嬉しさと楽しみたい気持ちと全てがない交ぜになって最早自分でもコントロールが効かなくなっている。
「翔兄、多分って言うか間違いなく眠いんだと思うよ、さと。
とりあえずスモールワールドに行こうよ?
あれ、のんびりだからその内寝るかも知れないし」
雅紀がそっと兄に耳打ちする。
「あっ、電池切れ寸前のぐずりか…。
それなら、雅紀の言う通り乗せちゃうか?」
「うん、その方がいいよ。
もう、智、自分でもワケわかんなくなってんじゃない?」
潤の言葉に頷く翔。
「わかったよ、智?世界中、行こう?
ほら、おいで」
この状態じゃベビーカーにも乗らないと踏んで、智を抱っこした翔。
「和は?俺がいい?まーにする?それともベビーカー?」
和也に声を掛ける。
騒いではいないもののこちらも眠そうだ。
「じゅんくー」
「了解、ほらおいで?」
潤が手を伸ばすとトコトコと歩いてきた。
その和也を腕のなかに納めた。