第5章 Fantastic Version <双子2歳>
「いいんじゃない?きっと喜ぶよ、きっと」
いつもの笑顔で言う雅紀。
「かなぁ」
「うん」
「じゃ買ってから行くわ」
そう言って潤が会計の方に行くのを雅紀は見送った。
食の細い双子に食べさせるのはなかなかハードな案件だからね…。
潤くん、責任感強いから気にしちゃうんだろうなぁ。
なんて思いながら、雅紀はビュッフェ台から様々な料理を豪快に皿に盛っていく。
もっとも雅紀は潤ほどは双子の食の細さを気にしてはいない。
医師の眼からは二人とも特に問題はない。
成長に従って自然に食べるようになるだろうと思っているから。
それでも執着の無さすぎる双子が皿1枚で気持ちが変わるならそれに越したことはない。
なにより潤の気持ちが軽くなるならと思っている。
小児科医をしてると、よく「うちの子、食べないんです!」とか「うちの子、寝ないんです」とか
訴える親がいる。
当人にとっては深刻な問題だからもちろんおざなりには出来ないけど、その場合の比較対象は大体育児書なんだよね?
初めてでわからないから、頼っちゃうのは解るけどやっぱり育児書は育児書で、参考にしかならない。
相手は生きた人間でロボットじゃないから…。
そういうと怒る親御さんもいる。
やっぱり子育ては難しいと思う。
でもさ、やっぱり相手は人間で…難しい分ご褒美もある。
にこにこ笑う、双子の笑顔をみながらそのご褒美を堪能する雅紀だった。